「・・・・・・お前は、なんだ?」
月明かりすら届かぬ深い森。木々の間に、二つの獣の姿が揺らめきながら何かに照らし出されている。
獣と見えたそれは、二人の人間がそれぞれ虎の姿を頭に抱いているのだった。
一人は、まるでそれ自体が一つの獣として生きているように。今にも牙を剥かんばかりに。
今一人は同じ虎でも、それは鋼鉄のように黒い光を放っている。周りの闇を従えるが如く。
あらゆる強敵に、いつも彼らは共に立ち向かってきた。
自分たちに課せられた使命は、怯むことを、引き下がることを許さない。それは彼らが英雄であり、“キング”であるからだ。
二人の抱く虎の頭は、彼らの王者の冠でもあるのだから。
だが。
リングを離れて、はじめて対峙するもの。
この目の前にいる圧倒的な存在は・・・!
光が。風が。目に見えぬ何かが。
肌を突き刺す刃となり、圧倒的な質量で押し潰す壁となり、彼らの足を大地に縫い留める。
ただそこにいる、ただそれだけで!
「貴様はなんだ!!!」
・・・・ヨ・・・・・コ・セ・・・・・・・
「何?」
・・・チカ・・・・・・・ラ・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだと・・・?」
アーマーキングが、その不可解な言葉を聞きとがめて呟く。
光と風が増した。二人は地を踏みしめ、その場に身体を支えているのがやっとだ。
ゴォーという炎の燃えあがるような音が、周囲を埋め尽くす。
殺意が膨れ上がる。襲いかかって来る、そう身構えた瞬間だった。
ドンッ
アーマーキングは予想もしない方向からの衝撃を受けて、バランスを崩すと横合いに倒れこんだ。
そこは絶壁の崖とは言わぬまでも、急な坂がかなり奥まで続いている。体勢を立て直すきっかけを掴めず、彼は坂を転がり落ちて行った。
(・・・なぜ・・・)
彼を突き飛ばしたのは、他でもない彼の無二の相棒だった。
転がり落ちて行くあいだ、頭上からとてつもない爆発音が響き渡る。
(キング・・・・・・・!)
―――アーマーキングが、全身打撲や切り傷だらけで死亡しているキングを見つけたのは、気を失ってからようやく目が覚めた、およそ6時間後のこと。
そこに敵の姿はなく、焼き尽くされたような森の残骸が広がっているばかりだった。