【STAGE 0】
静かな雪の降る夜。
とある小さな村の孤児院の前で、一人の少年がかじかむ手をこすりあわせてしばらく立ちすくんでいた。
中から聞こえるのは讃美歌だ。暖かい、柔らかい天国に続くかのような光と音が、窓から漏れている。
少年は長い間そこに立っていた。そのまま、白い景色の中に溶け込むのを望んでいるかのように。
・・・それは唐突だった。扉のノブが、カチャリと小さな金属音を立てる。
だが、開いた扉の向こうに現われた姿を見て、少年は寒さも忘れて目を見開き、息を呑んだ。
天使でも出てくるのかな・・・? そう思っていたのに。
そこに、虎の頭をした生きものが立っている。自分を見下ろして、何事か聞いている。
不思議と恐怖は感じなかった。珍しいものを見るような目つきで、少年はそれを見上げた。
なんで虎が人間の言葉をしゃべってるんだ・・・?
そう考えたのが最後だった。ゆっくりと瞼が下りてゆく。
中から溢れる甘い空気に誘われて意識を手放すと、少年はその虎の人の腕に崩れ落ちた。